クリティカルチェーン

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

久しぶりの台風上陸で、使っている路線が全線運転見合わせとなり出勤できない状態。神様から授かった貴重な一日をモンハンでもやって有効に過ごすか。
さて、TOCシリーズ4作目の本書は舞台がビジネススクールとなっており、これまた前作と違う環境設定。書き方もこれまでの主人公一人のラインではなく、複数の登場人物がそれぞれの問題に直面しており、ビジネススクールを通じて問題を解決していく形式。主にプロジェクトマネジメントを中心として、その問題点と解決法をTOCを絡めて解き明かす。御大の作品のクオリティはどれを取っても高いわ。それだけTOC理論がしっかりしているという証拠。以下、付箋を貼った部分とその所感。ちょっと長いが、本書が面白かったという証拠。

  • プロジェクトに内在する問題→不確実性。これをプロジェクトマネジメントに反映するためにはセーフティーが必要。ただしセーフティーのとり方には根拠や方法論が無いため、トップ・マネジメントからは拒否されやすい。
  • プロジェクトの各ステップの工数を見積もる際の判断基準を、正規分布曲線内に表すと80〜90%のラインとなる。これはマーフィーを考慮するため。→直感的にこれぐらいのセーフティは工数見積もりに入れている気がするが、改めて正規分布曲線上にそれを示すとやけに中央値から離れているなと実感。
  • 「どのプロジェクトも、最後の10%で苦労する。最後の10%のせいで、プロジェクトの完成がずるずる遅れる。」→あるある。いつまでたっても進捗報告が90%のままとか。原因は各ステップの重要性を考慮したスケジュールになっていないから。ステップのプライオリティ・クリティカルパスを把握し、そこにリソースを投入するスケジューリングが必要。
  • 「ステップがつながっている場合、それぞれのステップで作業が早く終わったり、逆に遅く終わっても、これが平均化されることはない。つまり、作業が遅れた場合は時間が溜まっていくが、早く終わってもその分時間が減ることはない。たくさん用意されているはずのセーフティが消えてしまうのは、これで説明がつく。」→なるほどね。でも、体験的にはこういった感触は無いけどなぁ。
  • 「リードタイムにとって、最大の敵はおそらく作業の掛け持ちだろう。」「みんなそれで苦しんでいる。会議だの、緊急事態だの他の仕事だのといっては横ヤリが入る。結果は同じだ。リードタイムが長くなる。考えてもみてくれ。作業時間を見積もる場合、実際の時間がその予想よりずっと短いのはみんなわかっているはずだ。しかし本能的にみんな、作業の掛け持ちの影響を考えて予想を立てている。」→たしかに作業の掛け持ちは、特にボトルネックとなる人にとって重要な問題となる。上記の不確実性の温床か。権限集中しすぎ。これも年功序列色があるため?
  • 「これまでのようなステップごとの期限設定は廃止しました。〜まだ時間があると思って作業開始を先延ばしするようなことはできなくなりました。要するに、学生症候群が消えたっていうことです。」→これは個人的に理解できない。不安が募って早め早めに仕掛かる性格なんで。。。でもまあ、こうすることで効果が出る人もいるかな。
  • 「(下請けに支払う)価格は重要だ。しかし、リードタイムもそれに勝るとも劣らず重要だ。時には価格より重要なこともある。まずは、そこから変化を加えていかないといけない。プロジェクトが遅れることによって、どのような経済的インパクトがあるのか正しく理解しないといけない。」→納得はするんだけど、結局価格勝負になっちゃうんだよね。下請けの無理は承知で契約しておいて、実際に失敗したら下請けの責任とする。リスクを数値化できればいいんだけど、それも予想であって確実ではないからなぁ。
  • 「もしプロジェクトの完成が一ヶ月遅れて大騒ぎするぐらいだったら、最初から下請けを選ぶ際にリードタイムをもっと重要視するべきじゃないか。しかし君の話では、そうではないらしい。どこも価格だけで業者を決めているようじゃないか。」〜「デベロッパーが入札を受け付ける際に、リードタイムを短くすることと、もしそれを果たせない場合は大きなペナルティーを課すことを条件として明記すれば、他の業者は怖がって誰も入札しない。デベロッパーの投資利益率はずっと高くなるしリスクも軽減できる。一方、仕事が取れたこの下請けは大きな利益を得られる」→会社のキャッシュフローを考えると、リードタイムを減らすことが他の下請けとの差別化につながるってこと。でもどうやって?→TOC